静岡県浜松市にて上級監査人カリキュラムの実地研修を実施しました

職場の外国人受入環境整備プロジェクトでは、10月1日(土)、2日(日)の2日間にわたって上級監査人カリキュラム実地研修を実施しました。

1回目となる今回は、全国の企業・団体からご参加いただき、6名の上級監査人を認定しました。本記事では、当日の様子をレポートします。

上級監査人カリキュラム実地研修とは?

外国人を受け入れている事業所を訪問し、評価を行う「上級監査人」に必要なスキルが学べる実地研修です。外国人を受け入れるための体制や職場環境における課題を見極め、改善に伴走できる監査人としての知識や所作を学んでいただけます。

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講師あいさつ:外国人雇用の適正化に注目が集まっています

アジアでは経済成長が一段と進み、賃金や技術の面において日本企業就労環境は以前の優位性を失いつつあります。また国際社会では、人権保障にもとづく経済取引を重視する流れが顕著になりました。

日本企業もこれからは、外国人労働者を適正に受け入れている事業所を取引先や国際社会に示していく必要があります。そのため当プロジェクトでは上級監査人と協力し、優良事業所を可視化するための事業所監査を推進しています。

第1回「上級監査人カリキュラム実地研修」開催概要

日時:10/1(土)10:00〜17:30、10/2(日)9:00~16:30

場所:一般社団法人グローバル人財サポート浜松(静岡県浜松市中区八幡町23 3階)

講師:鈴木 まり子(日本ファシリテーション協会)、田村 太郎(ダイバーシティ研究所)、堀 永乃(グローバル人財サポート浜松)、中村 千穂(中村千穂社労士事務所)、堀西 雅亮(島根県外国人地域サポーター)

研修タイムテーブル

研修1.ケーススタディで学ぶ職場の外国人受入環境の課題点と克服方法

2日間を通じて、各職場から提出されるチェックシートの「行間」から、現場で起きている事象の本質を読み取るコツを掴んでいただきました。

まずは「職場の外国人受け入れをめぐるケーススタディ」の実践です。外国人受け入れにまつわるトラブル事例について、以下2点を考察します。

  • どこに課題があったのか
  • どのような対応が求められるか

あらかじめ用意してもらった各自の考えを発表しあい、多様な視点からトラブルの未然防止策や対応策を考えました。

また2日目には、より具体的な職場課題の見極めと監査先への情報提供の方法についてレクチャーを実施。ほか、各種案内やルールを多言語化する方法と失敗事例の共有、監査レポートの書き方、社会保険労務士による法令研修などを行いました。

研修2.適正監査を目指すためのコミュニケーション術

監査を受ける側は、監査への抵抗感や不安感を持っていることが多くあります。

そのため上級監査人には、次の3つのチカラが求められます。

  • 課題を見極めるチカラ
  • 寄り添うチカラ
  • 情報提供するチカラ

あわせて、監査先で円滑なコミュニケーションを行うためのファシリテーション技法も学んでいただきました。

▲座る位置によってその場の空気・対話が変わることを実感

ファシリテーションの講師は、行政や学校、医療介護、被災地などの現場支援を行う、日本ファシリテーション協会 鈴木まり子氏が務めました。

研修3.外国人受入優良企業の現場訪問

▲一歩足を踏み入れると「こんにちは!」と元気なあいさつが聞こえてくる工場

研修参加者の全員で、職場の外国品受入優良企業の1社である平野ビニール工業株式会社を訪問しました。平野ビニール工業は1969年創立、帆布製品や車両用シート表皮などの裁断縫製メーカーです。

148名いる従業員のうち、日本国籍人材が62名で外国籍人材は86名(男女比は2:8)になります。外国人材の働きやすい職場をどのように整備しているのかポイントを聞きました。

▲平野利直代表、外国籍社員様のデザインしたロゴ入りの会社Tシャツを着て

平野利直代表は、「多文化共生においては、社員の耳にタコができるくらい経営者の想いを伝え込むことが大事」と語ります。

たとえば、経営理念である「HIRAVI DNA」の15カ条を多言語に翻訳。毎朝の朝礼で読み上げるほか、うち1カ条を平野代表みずから想いを込めて解説しているそうです。

▲工場内のいたるところに多言語翻訳された「HIRAVI DNA」の掲示が

また「放置と無関心が一番の悪」という考えのもと、総務課を通じた外国人材の生活サポートを実施しています。

現場の生産管理については、以下のポイントを教えていただきました。

  • 誰でも見て分かる表記にする(何かを達成したらシールを貼るなど)
  • 数字で管理する(1人ひとりのスキルを見える化し、評価をあいまいにしない)
  • わかりやすい目標を掲げ、達成者は全員の前でほめる

そうした取り組みによって、外国人従業員が自治会や地域のイベントに積極的に参加する風土も醸成できたとのこと。外国人材の輝いて働ける職場づくりは、地域になくてはならない企業づくりにも繋がっていました。

第1回「上級監査人カリキュラム実地研修」を終えて

本プロジェクトでは、上級監査人の役割を「できていることを適正に評価し、よりよい職場環境整備に導ける人」と定めています。

監査先である企業の担当者は、外国人労働者を受け入れることへの責任感や不安感を抱いています。そうした感情に共感し寄り添うことが、上級監査人にとって基本的なスキル。そのうえで職場の課題を見極め、次の目標値を設定し支援する姿勢を持っていただけたらと思います。

当プロジェクトではこれからも、上級監査人のみなさまが自信をもって監査に向かえるようご支援を続けてまいります。